デジタルマルチメータとオシロスコープ

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R&S®Essentials | デジタルオシロスコープの基礎

デジタルマルチメータ(DMM)とオシロスコープ:測定用途に合わせた測定器の選び方

電子計測エキスパート、Paul Denisowski

デジタルマルチメータ(DMM)オシロスコープは、ほとんどのエレクトロニクスラボにある測定ツールです。どちらも電圧を測定し、ブロック図の見た目も非常によく似ていますが、その測定で得られる結果は異なります。この記事では、デジタルマルチメータ(DMM)とオシロスコープの違いと、用途に合わせた使い分けについて説明します。

デジタルマルチメータ(DMM)とは何ですか?

デジタルマルチメータ(DMM)とは何ですか?

一般的なデジタルマルチメータ(DMM)では、AC/DC電圧、AC/DC電流、抵抗、ダイオード順電圧、温度、キャパシタンスを測定できます。通常、結果は内蔵ディスプレイに瞬時値として数値で表示されます。しかし、一部のDMMは、連続した測定に関する統計情報も提供します。

ポイント:デジタルマルチメータは複数の信号パラメータを測定できますが、一度に測定できるのは1種類の測定のみです。

オシロスコープ

オシロスコープとは何ですか?

オシロスコープは主に電圧の時間変化を測定し、それを波形としてプロットします。元来オシロスコープが捕捉するのは電圧のみですが、プローブによっては他の値も測定することができます。

波形を収集した後は、オシロスコープの幅広い測定機能と解析機能を使用することができます。電圧測定では、実効値(RMS)に加えて、ピークツーピーク値、ピーク値、ベース値を取得することができます。

通常、オシロスコープには複数の入力チャネルがあり、これらの入力チャネルを使って複数の信号を同時に測定し、時間または位相との相関を表示することができます。また、オシロスコープでは、捕捉した波形を周波数と振幅(FFT)などの別の形で表示することもできます。

ポイント:オシロスコープでは、複数の信号と複数のパラメータを同時に測定できます。

DMMとオシロスコープの違いは何ですか?

ハイレベルなブロック図を比較すると、どちらの測定器もコアの部分でA/Dコンバーター(ADC)が使用されていることがわかります。ADCの前段には、いくつかのアナログの調整回路があり、その中心となるのはアッテネータステージです。DMMとオシロスコープの間にはいくつかの基本的な違いがありますが、それぞれのブロックに重要な違いがあり、これが用途の違いにつながっています

マルチメータのブロック図には、電流源を含む追加のブロックが存在します。DMMの一部の測定モードでは、この電流源が使用されます。例えば、抵抗モードでは、シャント抵抗と被試験抵抗を介して既知の電流を発生させるのにこの電流源が使用されます。電流の大きさとシャント抵抗の値がわかっているため、オームの法則を使って被試験抵抗の抵抗値を特定することができます。

オシロスコープにはこのようなブロックが存在しないため、オシロスコープ自体で抵抗を測定することはできません。ただし、オシロスコープには、メモリコントローラーとADCからのサンプルを格納するためのメモリ機能が備わっています。このバッファーによって、オシロスコープは波形を表示するのに十分な情報を捕捉できるようになっています。

さらに、オシロスコープには、さまざまな信号条件を捕捉するのに役立つ高度なトリガシステムがあります。例えば、オシロスコープでは、パルス幅が一定の幅(時間)に違反したときにだけ更新を行うことができます。これに対して、ベンチDMMには、トリガ入力が備えられているものもありますが、これは単なるスタート/ストップのトリガです。

また、フロントパネルからわかるように、DMMとオシロスコープでは、プロービングのメカニズムに違いがあります

DMMは、通常、さまざまな低周波のテストリードやプローブに対応できる4 mmバナナジャックを備えています。一般的なテストリードはシリコン被覆で覆われ、片側は4 mmコネクタ、反対側は先の尖った金属になっています。これらのテストリードは、手持ちでの測定や短時間での測定に役立ちます。

R&S®UDS デジタルマルチメータ

通常、オシロスコープのフロントパネルには、BNC型コネクタが付いています。これらのコネクタでは、さまざまな種類のプローブタイプ(その多くは電圧測定用)を使用できます。大半のオシロスコープには、さまざまな汎用測定に適したパッシブ電圧プローブが付属しています。また、センサを使用して他の電気的値を測定するプローブも存在します。例えば、ホール効果センサを備えたプローブではワイヤーの電磁界が電圧に変換されます。そのため、オシロスコープで電流を測定することができます。

DMMとオシロスコープのどちらでも、直接配線が利用できます。例えば、テストフィクスチャを使用する場合、フィクスチャには4 mmジャックやBNC(またはその他の同軸コネクタ)が内蔵されています。互換コネクタを備えたケーブルを使ってフィクスチャをDMMやオシロスコープに接続することができます。

オシロスコープにケーブル接続されたDUT

オシロスコープとDMMはどのように使い分ければ良いのですか?

予算の都合でどちらか一方しか使用できないこともあれば、両方使える環境にいてもどのように使い分ければよいかわからないこともあるでしょう。幸いにも、いくつかの測定シナリオでは、どちらを使用すべきかは明らかですし、多くのケースでは、どちらの測定器を使用しても構いません。

ディスクリートデバイスの特性を測定する場合には、DMMを使用するのが適しています。R&S®UDSなどのDMMでは、抵抗、キャパシタ、ダイオード、またはトランジスタの特性を測定することができます。例えば、R&S®UDSを使うと、キャパシタの静電容量やダイオードの順方向降下を測定できます。これらの測定値は、回路の設計時やコンポーネントの損傷の有無を判別する場合に役立ちます。ただし、完全な特性評価を行う場合には、パッシブコンポーネントの寄生成分を測定するLCRメータの使用を検討することをお勧めします。

DMMは、DCに近い信号で電圧または電流を測定するのにも適しています。ただし、ACを測定する場合(100 kHzを超える周波数成分が存在する場合)は、帯域幅が制限されているため、DMMでは信号が正しく測定されない可能性があります。

これに対して、オシロスコープは帯域幅が非常に広いため、高周波数成分を含む信号を測定するのに最適です。オシロスコープでDCを測定することはできますが、DUTへの負荷がDMMよりもかなり小さくなります。また、オシロスコープは複数の時間相関チャネルを備えているため、データ信号とクロックやイネーブル信号とを比較するのに最適です。

また、オシロスコープは、多くの場合、マイクロコントローラーのクロックを測定するのにも適しています。DMMのテストリードはキャパシタンスが大きいため、周波数測定は数MHzに制限される可能性があります。オシロスコープは信号への負荷が小さいため、通常はかなり大きな帯域幅にも対応できます。

シナリオ マルチメータ オシロスコープ
安定したDC電圧の確認 O X
抵抗/導通の測定 O X
起動タイミングのデバッグ X O
信号エッジのリンギングの診断 X O
消費電流の測定 O X
ランダムな電圧ドロップアウトの検出 X O
PWMデューティーサイクルの評価 X O
電源レールリップルの検査 X O

オシロスコープとDMMが一体化された測定器

多くの場合、現在のオシロスコープには追加機能が搭載されています。例えば、オシロスコープでは、ファンクションジェネレーターが内蔵またはオプション提供されているのが一般的です。

同様に、DMMを内蔵したオシロスコープも存在します。例えば、R&S®Scope Riderハンドヘルドオシロスコープの2チャネルモデルには、AC/DC電圧、AC/DC電流(外部シャントを使用)、抵抗、キャパシタンスを測定できるDMMが内蔵されています。

R&S®Scope Rider
ベンチに置かれたR&S®Scope Riderハンドヘルドオシロスコープ

まとめ

理想的なラボ環境であればDMMとオシロスコープの両方が備えられているでしょう。その場合でも、目的の作業に最適なツールを選択しなければなりません。

DMMは、正確なDC電圧/電流、低周波AC電圧/電流、または特定成分パラメータなど、高精度の単一測定を行う必要がある場合に適しています。

これに対して、オシロスコープは、複数の信号の捕捉と比較を一度に行い、高周波数成分の分析や信号の波形の表示を行うのに適しています。

用途に適した測定器を選ぶようにすることが重要です。弊社のエキスパートにお問い合わせください。

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