モバイルネットワークのビデオ品質テスト

このアプリケーションカードでは、モバイルネットワーク上でのビデオサービス品質テストのベストプラクティスを紹介し、ビデオサービスのさまざまな種類と、ビデオストリーミングの分野での最近の変化について解説します。

課題

ビデオサービスは、今日のモバイルネットワーク上で最も多くのデータを消費しており、その割合は増加する一方です。XR/VRアプリケーション向けの新しいサービスは、同様の伝送技術を使用して、さらに多くのデータを消費します。伝送容量の増加に伴って解像度も上がっており、高解像度のスマートフォンを使用するユーザーからの要求はますます厳しくなっています。ビデオサービスの品質は、顧客満足度を大きく左右します。提供する解像度と品質の目標を高くするか低くするかの決定は、伝送するデータ量の大きさゆえに、モバイルネットワークオペレーター(MNO)のインフラに重大な影響を与えます。

エンドユーザーの満足度を決める要素としては、待ち時間(最初の画像が表示されるまでの時間)、画像品質、ビデオ再生の滑らかさ(フリーズがなく、フレームレートが十分高いこと)が挙げられます。ビデオコンテンツプロバイダーは、不完全なネットワーク、起こりうるネットワークの停止、ボトルネックに対処するために、圧縮、配信、ビデオバッファリングを常に調整することで、これらの体感品質(QoE)要素の間の最適なトレードオフを見つけようとしています。

ネットワーク性能がビデオ品質に与える影響

ビデオ伝送は、常に連続的なストリームであるとは限りません。一般的なプラットフォームからのストリーミングは、むしろいくつかのファイルを順次ダウンロードするようなものです。ビデオの一部はバッファーに記憶されているため、モバイルネットワークで伝送が行われていない時間が必ず存在します。チャンク単位でファイルのようなダウンロードを行うことで、ネットワークの多くの潜在的問題を覆い隠し、停止や伝送容量の低下を乗り越えてスムーズな再生を実現できます。MNOがこれらの問題について情報を得られない場合、問題は気づかれないままです。

クライアント-サーバー方式の場合、ファイルのようなダウンロードとバッファリングを通じて、ネットワークの問題に余裕を持って対処できます。リアルタイムのライブビデオの場合、取りうる手段はもっと限られています。ライブTVストリーミングでは遅延が短いため、デバイス上でビデオをバッファリングできるのはせいぜい数秒間です。そのため、データ伝送の頻度を上げ、連続的な伝送に近づける必要があります。バッファーで乗り越えられるのは短時間の停止に限られるので、ビデオフリーズのリスクが高くなります。ネットワーク上のアクティビティが多いため、ネットワーク性能をほぼシームレスに監視できます。

ネットワークリソースの使用量は、ビデオ配信の方法に応じて変化します。すべてのビデオサービスでは、ビデオクライアント(スマートフォン上に存在)が、エンコードされたビデオ情報をコンテンツサーバーに要求して受信します。コンテンツサーバーは通常、MNOネットワークの外部にあるサードパーティーです。リアルタイムでないサービスの場合、ビデオは開始前に数秒間バッファリングされます。リアルタイムサービスでは事前のバッファリングが利用できず、通常は次の同期フレームで再生が開始されます。ビデオファイルをスマートフォンのバッファーに伝送するには、いくつかの方法があります。

  • 全体のダウンロード
  • プログレッシブダウンロード(赤のライン)
  • ビデオセクションのチャンク単位の伝送(青のライン)
  • ライブビデオ/TV(緑のライン)
  • リアルタイムのビデオストリーム(オレンジのライン)

主流は今でも、非リアルタイムのストリーミングです。ただし、リアルタイムのサービスも増えつつあります。例としては、視覚的フィードバックを伴うリモート制御、監視サービスなどが挙げられます。リアルタイム伝送はシームレスである必要があります。ごく短時間の中断や遅延でも気づかれてしまうからです。ビデオサービスはすでに大きな負担をネットワークに与えていますが、リアルタイムサービスの要求はさらに厳しくなります。

QualiPoc Androidでのビデオ品質テストのグラフィカルユーザーインタフェース
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ローデ・シュワルツのソリューション

解像度、フレームレート、ビットレート推定値、フリーズ回数といった主な技術的指標の測定は、重要な意味を持ちます。ユーザーが感知する品質は、最終的にはこれらの指標によって決まるからです。ビデオ圧縮は、高度にスケーラブルであり、アルゴリズムと設定に基づいています。解像度とビットレートが同じでも、画像品質は異なる場合があります。ビデオのカクつきやフリーズといった圧縮と解像度の悪化の影響を高い信頼性で知るには、統合型の知覚ベースの測定が最適です。これらの要因は、1つのスコアに統合されます。知覚されるビデオ品質の測定は、画像の直接解析に基づいて行われ、ユーザーによる実際の品質知覚に関連する平均オピニオンスコア(MOS)をビデオに対して生成します。

平均オピニオンスコア(MOS)は、知覚されるビデオ品質の測定と予測に広く用いられている標準的手法です。Rohde & Schwarz SwissQual AG(ローデ・シュワルツの完全子会社)が開発したTU-T J.343.1手法は、ITU-Tによって承認されました。この手法は、実際に受信されたビデオ情報と表示された画像を解析することで、平均的な人間の視聴者が知覚する視覚的品質を予測します。人間の視聴者と同様、アルゴリズムは受信されたビデオだけを観察します。基準となるソースビデオとの比較が不要なので、ライブビデオに対しても使用でき、暗号化されたコンテンツのストリーミングを含む、現行のあらゆるモバイルビデオのストリーミングサービスに適用できます。ETSI TS 102 250-2のJ.343.1では、すべてのモバイルビデオサービスに対する視覚的品質測定が推奨されています。

この新しいビデオ品質アルゴリズムは、スマートフォン向けに設計されており、Android上で完全に実装されていて、ローデ・シュワルツのすべてのモバイルネットワークテスト製品でサポートされます。ローデ・シュワルツのテスト製品は、ハンドヘルド型のQualiPoc Androidから大規模なBenchmarker3まで、広い範囲にわたっています。軽量なQualiPocは、受信したビデオをリアルタイムで評価でき、ライブビデオ(モバイルネットワークでの最も重要なテストケース)にも対応しています。ビデオ品質の評価は、完全に自動化されたビデオサービス向けソリューションに組み込まれており、包括的な技術的パラメータとKPIのセットに対応しています。ローデ・シュワルツ製品のエントリーレベルバージョンは、YouTubeビデオを評価でき、このプラットフォームで現在使用されているさまざまなビットレートと解像度をカバーするのに最適です。

結果と主な利点

ローデ・シュワルツのビデオ品質テストソリューションを使えば、ネットワークオペレーターは、一般的なビデオアプリケーションの自社ネットワーク上での動作を検証できます。ビデオサービスの性能は顧客満足度に重要な影響を与えるため、適切なテストソリューションを使うことで、モバイルネットワークオペレーターは、加入者の満足度を高め、解約率を引き下げ、競合他社の顧客を惹き付けることができます。

ビデオストリーミングサービスの測定では、コンテンツサーバーからユーザーデバイスおよびその上のソフトウェアクライアントまで、伝送チェーンのすべての部分が解析されます。モバイルネットワークの性能自体は、その1つの要素に過ぎません。

その他の情報

テスト/測定ソリューションおよび製品(QualiPoc AndroidとR&S®FR4 Freerider 4バックパックシステムなどの関連製品、およびBenchmarker3)の詳細については、ローデ・シュワルツ営業所までお問い合わせいただくか、www.rohde-schwarz.comをご覧ください。