広帯域変調ロードプル

最終的な運用で使用されるような広帯域変調ロードプル信号は、RFフロントエンドの性能に関する真の知見をもたらします。しかし、インピーダンスが変化すると、RFアンプの動作も変化します。RFアンプが広帯域アンテナに信号を供給する場合、インピーダンスの変動によって動作が変化し、その挙動は予測も計算もできません。

通信システムの多くのRFフロントエンドやRFアンプは、広帯域変調信号をアンテナシステムに供給しています。フロントエンドは、複数の伝送バンドを含む広範な周波数で使用されるため、負荷となるインピーダンスはさまざまに変化します。このような分散性負荷は、アンプのゲインや歪みに大きな影響を与える可能性があります。

R&S®RTP164BとR&S®SMW200Aで構成された広帯域変調ロードプルソリューション
R&S®RTP164B ハイパフォーマンス・オシロスコープとR&S®SMW200A ベクトル信号発生器で構成された広帯域変調ロードプルソリューション
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課題

RFパワーアンプ設計者は、ターゲットアプリケーションで最高のデバイス性能を実現したいと考えています。多くのRFシステムは公称50 Ωシステムですが、実際にRFフロントエンドから見えるインピーダンスは大きく異なることがあります。アンテナは、広い周波数にわたってアンプに負荷を与える可能性があります。アンプに対するインピーダンスは、20 Ω未満から100 Ωを超える範囲まで大きく変化することがあります。残念ながら、エラーベクトル振幅(EVM)や隣接チャネル漏洩電力比(ACLR)といった重要性能指標(KPI)で検証されるゲイン、効率、歪みの挙動を予測できるモデルはありません。RFフロントエンドが分散性負荷に対応できるかどうかを知るための唯一の方法は、それをテストすることです。

パッシブベクトルレシーバー・ロードプルの基本的なセットアップのブロック図
パッシブベクトルレシーバー・ロードプルの基本的なセットアップのブロック図
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ローデ・シュワルツのソリューション

ローデ・シュワルツは、広帯域変調ロードプルに独自のアプローチを採用しています。従来のロードプルシステムでは、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)と機械式チューナーを使用して、トランジスタに異なるインピーダンスを生成するパッシブロードプルシステムを構成していました。

本ソリューションは、VNAをベクトル信号発生器とベクトル・シグナル・アナライザに置き換えることで、さまざまな変調信号に対応し、異なる負荷条件下での変調テストによる評価を可能にします。チューナーは、テストデバイスの出力側に必要なインピーダンスを生成するために使用されます。

従来の変調ロードプルの構成。
従来の変調ロードプルの構成。ベクトル信号発生器をスティミュラスに、ベクトル・シグナル・アナライザを測定に使用
広帯域変調ロードプルのセットアップ
広帯域変調ロードプルのセットアップ
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このアプローチは、狭帯域信号に対して長年使用され、その有効性が実証されています。しかし、信号の帯域幅が広がると、チューナー固有の周波数応答や群遅延が測定結果を歪ませるため、別のアプローチが必要となります。

ローデ・シュワルツは、機械式チューナーの代わりに、DUT出力側にアクティブ信号を注入して必要なインピーダンスを生成するアクティブロードプル方式のソリューションを開発しました。このコンセプトを、「広帯域変調ロードプルのセットアップ」の図に示します。

このソリューションでは、4ポートのR&S®RTP オシロスコープを使用して、DUTの入力側と出力側における順方向波および逆方向波を測定します。R&S®RTP オシロスコープは、時間および位相同期機能に加え、広い記録帯域幅も備えています。R&S®SMW200A ベクトル信号発生器は、デバイスへの入力となるテスト信号と、必要なインピーダンスを生成するためのチューン信号を供給します。2つの信号間のタイミングと位相条件が安定しており、ユーザーが制御可能であることは非常に重要です。R&S®RTP-K98 変調ロードプルソフトウェアがセットアップ全体を制御するため、ユーザーは校正と測定を的確に実行することができます。DUTの入力側および出力側にMarki MicrowaveのCD10-0106 デュアル方向性結合器を使用して、良好な結果が得られています。

このソリューションでは、4ポートのR&S®RTP オシロスコープを使用して、DUTの入力側と出力側における順方向波および逆方向波を測定します。R&S®RTP オシロスコープは、時間および位相同期機能に加え、広い記録帯域幅も備えています。R&S®SMW200A ベクトル信号発生器は、デバイスへの入力となるテスト信号と、必要なインピーダンスを生成するためのチューン信号を供給します。2つの信号間のタイミングと位相条件が安定しており、ユーザーが制御可能であることは非常に重要です。R&S®RTP-K98 変調ロードプルソフトウェアがセットアップ全体を制御するため、ユーザーは校正と測定を的確に実行することができます。DUTの入力側および出力側にMarki MicrowaveのCD10-0106 デュアル方向性結合器を使用して、良好な結果が得られています。

広帯域変調ロードプルの拡張セットアップ
広帯域変調ロードプルの拡張セットアップ
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ハイパワーのDUTやより広いチューニング範囲には、チューン信号を増幅するためにR&S®SAM100 システムアンプのようなアンプをループインして使用する必要があります。アンプまたは信号発生器による不要なロードプルを避けるために、デカップリング用に1つ以上のサーキュレーターを追加することができます。

信号帯域幅と対応周波数範囲は、機器の構成によってのみ制限されます。最大2 GHzの信号帯域幅をサポートしているため、主要な通信システムに対応可能です。最大周波数が8 GHzなので、モバイルおよびWi-FiアプリケーションのFR1バンド(最大7.125 GHz)にも対応可能です。

最大出力パワー、ゲイン、EVM、またはACLRは、b2波形をサンプリングして直接測定できます。DUTの性能が非常に高い場合は、b2信号を分割し、拡張ダイナミックレンジと優れたEVM測定機能を備えたR&S®FSVA3000などのシグナル・スペクトラム・アナライザを使用できます。

R&S®RTP-K98による変調歪みの測定:DUTのピーク対平均パワー比(PAPR)の等高線図
R&S®RTP-K98による変調歪みの測定:DUTのピーク対平均パワー比(PAPR)の等高線図
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アプリケーション

他の類似したネットワーク・アナライザ測定と同様に、スミスチャート上の特定の点に正確かつ確実にチューニングするためには、システムレベルの校正が必要です。アンプやサーキュレーターを含むシステム内のすべてのアクセサリは、その影響を考慮するために校正に含める必要があります。R&S®RTP-K98ソフトウェアは、各校正ステップを視覚的に表示しながらプロセスをガイドします。校正は、最初にDUT入力プレーンでオープン、ショート、マッチ(OSM)による校正を実行し、その後、既知のスルーを使用して出力側へ転送するという2段階のルーチンで実施されます。

高い確度を実現するには、入力信号と異なるチューン信号を使用する必要があります。これは矛盾しているように見えますが、理由は単純です。RFフロントエンドは信号に歪みを加えるため、出力信号b2は入力信号a1とは異なります。正確な測定を実現するには、チューン信号a2がb2と同じである必要があります。このアプリケーションは、さまざまなインピーダンスポイントに合わせてチューニングする前に、まず各周波数およびレベルポイントにおけるDUT出力信号b2を記録し、これをチューン信号a2として使用します。このチューン信号には、特定のシナリオでDUTによって追加された個々の歪みが含まれます。

R&S®RTP-K98 アプリケーションソフトウェアは、シングルポイントチェック向けにシングルインピーダンスチューニングを提供し、外部ユーザープログラムから制御される場合はステップバイステップのアプローチを採用しています。掃引プランでは、複数の周波数とレベルに対して異なるインピーダンスを用いた測定シーケンスを作成でき、ゲイン、最大出力パワー、EVMなどのデバイスKPIの等高線プロットを生成します。ベクトル信号発生器の2チャネル間の振幅および位相の関係を変更するだけでインピーダンスを調整できるため、チューニングは非常に高速です。

自動生成されるテストレポートには、すべての結果が含まれます。さらに、すべてのテストデータは後処理用にCSVなどの扱いやすい形式でまとめられます。

デジタルプリディストーション(DPD)は、R&S®RTPオシロスコープ用のダイレクトDPDプロセスを搭載したR&S®VSE-K18 アンプ測定ソフトウェアをループインすることで利用可能です。カスタムのプリディストーション信号と外部評価を使用することで、任意のユーザー定義DPDも利用できるようになります。

このソリューションには、分散性インピーダンスを補正して、より現実的な測定を可能にし、新たなアプリケーションの可能性を開くパワフルな拡張機能が含まれています。アンテナのインピーダンスは周波数に大きく依存するため、信号帯域幅が100 MHzを超えると、バンド内であってもこの変動を無視することはできません。このソリューションでは、アンテナの特性が記述されたS1Pファイルを使用することで、周波数変動を含む現実的なシナリオを再現できます。また、2つのS2Pファイルを補正することで、整合回路やバンドパスフィルタを再現することもできます。異なる整合回路に対応する各S2Pファイルを使用することで、整合回路の影響を簡単に最適化でき、その設計をシミュレーション環境に反映させてS2Pで表現できます。さらに、チューナーデータをS2PファイルとしてR&S®RTP-K98ソフトウェアにロードしてその影響を補正することで、ハイブリッドシステムを構成することもできます。

最終的にこのオシロスコープベースのソリューションは、2台目のR&S®SMW200Aを用いたエンベロープトラッキングや、DUT応答に関する真のタイムドメイン情報との整合性を得るために使用できます。

分散インピーダンスと補正
分散インピーダンスと補正
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まとめ

標準的なラボ用機器を使用した広帯域変調ロードプルソリューションは、正確なインピーダンスチューニングに対応する、高速で汎用的なコストパフォーマンスに優れたソリューションです。機器の柔軟性により、幅広い信号とアプリケーションに対応可能です。