R&S®ESSENTIALS | スペクトラム・アナライザとベクトル・ネットワーク・アナライザの基礎

ベクトル・ネットワーク・アナライザのアンテナ測定

著者:Paul Denisowski、プロダクトマネージメント・エンジニア

最新の無線通信において、アンテナは伝導信号と放射信号を変換する重要な役割を担っています。実環境下でアンテナの性能を検証するためには、物理的な測定が必要です。

アンテナインピーダンスの測定

シミュレーションとモデリングによりアンテナの性能を予測できますが、実環境の要因が変動を引き起こすことが多くあります。そのため、アンテナの性能を検証するためには、実環境下での物理的な測定が必要です。

以下の2種類のアンテナ測定があります。

  • 放射測定:利得、指向性、ビーム幅、効率などのパラメータを測定します。
  • インピーダンス測定:アンテナの(複素)インピーダンスを測定します。

アンテナのインピーダンスにより、アンテナが吸収または放射する入力/送信パワーの量、およびトランスミッターに戻るパワーの量が決まります。これは、アンテナに信号を注入し、反射信号の振幅と位相を測定することで確認できます。

アンテナインピーダンスの測定にはさまざまな手法とツールを使用できますが、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)を使用して反射(S11)測定を実行する方法が広く用いられます。

2種類のアンテナ測定

VNAは、進行波/反射波パワーのスカラーおよびベクトル測定を実行する汎用的な測定器です。広い周波数レンジにわたって高い確度を備え、さらに広いダイナミックレンジも実現しています。また、ケーブル損失の測定やフィルター、増幅器のテストなど、別のRF測定にも使用できます。

さまざまな形状のVNA

アンテナインピーダンスの測定方法

アンテナ測定には、3つの主要なステップがあります。

1. アンテナを接続する
多くの場合、アンテナはフィードラインを介してVNAに接続されます。このフィードラインはVNAポートに直接接続されるか、またはVNAとフィードラインの間に追加の被試験デバイス(DUT)ケーブルが使用される場合があります。DUTケーブルを使用する場合は、ケーブル端で校正を実行することで正確な測定を確保します。

2. VNAを設定する
3つのポイントを考慮する必要があります。

  • トラッキングジェネレーターの設定:掃引スティミュラス信号を供給します。これは、アンテナへの入力として使用されるだけでなく、反射信号を測定する際の基準としても使用されます。
  • 掃引周波数範囲の指定:トラッキングジェネレーターを掃引する周波数範囲を指定します。
  • 測定ポイント数の設定:アナライザのデフォルト設定よりも多い数を設定すると、より詳細な解析が可能になりますが、1回の掃引にかかる時間も長くなります。

3. セットアップを校正する
正確なアンテナインピーダンス測定には、1ポート校正を実行する必要があります。校正プロセス中は、アンテナを接続する位置に各校正標準を順番に取り付けます。
校正標準には以下の3種類があります。

  • オープン
  • ショート
  • マッチ(ロード)

手動で取り付けるこれらの標準の代わりに、電子校正ユニットを使用することができます。このユニットは、接続されたVNAにより制御され、内部標準が自動的に切り替わるため、校正を短時間で実行できます。

アンテナまたはフィードラインをVNAポートに直接接続する場合は、校正標準もこのポートに直接取り付ける必要があります。DUTケーブルを使用する場合は、校正標準をDUTケーブルの端に取り付ける必要があります。

最初にアンテナを接続します。多くの場合、アンテナはフィードラインを介してVNAに接続されます。このフィードラインはVNAポートに直接接続されるか、またはVNAとフィードラインの間に追加の被試験デバイス(DUT)ケーブルが使用される場合があります。DUTケーブルを使用する場合は、ケーブル端で校正を実行することで正確な測定を確保します。

VNAとアンテナの接続

VNAを設定する際には、3つのポイントを考慮する必要があります。

  • トラッキングジェネレーターの設定:掃引スティミュラス信号を供給します。これは、アンテナへの入力として使用されるだけでなく、アンテナからの反射信号の量を示す際の基準としても使用されます。
  • 掃引周波数範囲の指定:トラッキングジェネレーターを掃引する周波数範囲を指定します。
  • 測定ポイント数の設定:アナライザのデフォルト設定よりも多い数を設定すると、より詳細な解析が可能になりますが、周波数ポイントが増えるため、1回の掃引にかかる時間も長くなります。

正確なアンテナインピーダンス測定のための校正標準

VNAの設定に加えて、正確なアンテナインピーダンス測定には1ポート校正を実行する必要があります。校正プロセス中は、アンテナを接続する位置に各校正標準を順番に取り付けます。

校正標準には以下の3種類があります。

  • オープン
  • ショート
  • マッチ(ロード)

手動で取り付けるこれらの標準の代わりに、電子校正ユニットを使用することができます。このユニットは、内部の標準を自動で切り替え、接続されたVNAにより制御されます。手動の標準を使用するよりも、はるかに短時間で校正できます。

校正標準と電子校正ユニット

アンテナまたはフィードラインをVNAポートに直接接続する場合は、校正標準もこのポートに直接取り付ける必要があります。DUTケーブルを使用する場合は、校正標準もDUTケーブルの端に取り付ける必要があります。

VNAアンテナ測定のための校正標準の接続

アンテナインピーダンス測定の形式

VNAは、アンテナインピーダンスの解析に役立つ複数の形式を提供します。

  • 定在波比(SWR):SWRは、進行波と反射波のパワー比を示し、理想的な値は1:1です。多くの場合、周波数に対してプロットされ、帯域幅を評価するために使用されます。
  • リターンロス:dB単位で表示され、進行波パワーに対する反射波パワーの比を対数スケールで表示します。値が高いほど、アンテナ性能が良いことを示します。
  • 複素インピーダンスとスミスチャート:VNAはスカラー値だけでなく、複素インピーダンスも測定できるため、実数成分と虚数成分を解析できます。結果はスミスチャートに表示され、周波数に応じたインピーダンスの変化が包括的に表示されます。

アンテナインピーダンス測定の形式

まとめ

  • アンテナ測定には、放射測定とインピーダンス測定の2種類があります。
  • アンテナインピーダンスを測定するために広く用いられている方法は、VNAを使用して反射(S11)測定を実行する方法です。
  • VNAアンテナ測定は、以下の3つのステップで実行します。
    • アンテナを接続する
    • VNAを設定する
    • セットアップを校正する
  • VNAを設定する際には、以下の3つのポイントを考慮する必要があります。
    • トラッキングジェネレーターの設定
    • 掃引周波数範囲の指定
    • 測定ポイント数の設定
  • 正確なアンテナインピーダンス測定には、1ポート校正を実行する必要があります。
  • アンテナまたはフィードラインをVNAポートに直接接続する場合は、校正標準もこのポートに直接取り付ける必要があります。DUTケーブルを使用する場合は、校正標準もDUTケーブルの端に取り付ける必要があります。
  • アンテナインピーダンスの解析に役立つ以下の3つの形式が提供されます。
    • 定在波比(SWR)
    • リターンロス
    • 複素インピーダンスとスミスチャート

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