MXOオシロスコープを用いた容易な電源シーケンス設定とリップルノイズ解析

今日の複雑化した電子回路に対処するためには、異なるパワーレベルを供給する複数のコンポーネントを統合する必要があります。このようなコンポーネントの相互運用性を保証する堅牢な回路では、電源供給のタイミングに対応するために、慎重な設計、クリーンで安定した電源分配回路が必要になります。電圧レベルが低い場合、許容値はパーセンテージで定義され、精密な測定が困難になる可能性があります。

課題

デバイスの適切な動作には回路設計の電源オン/オフがきわめて重要です。これは、想定される電圧条件下で部品やコンポーネントが適切に動作することを確認するために役立ちます。オシロスコープは、パワーレールシーケンス中のタイミング動作を検査するのに最適です。しかし、一般的な4チャネルオシロスコープでは、複雑な回路について制限された解析しかできません。レール電圧が小さく、許容値が1 %~2 %と厳しくなると、測定器やプローブのノイズが原因で正確な測定が困難になることが多くあります。高速スイッチング負荷と高周波ノイズ結合により問題が発生する可能性があり、特にEMIの問題に影響します。

ローデ・シュワルツのソリューション

MXO 5シリーズ オシロスコープでは、各種パワーレールへのプロービングが簡単なため、電源シーケンス解析が容易になります。このオシロスコープは8個のアナログチャネルと16個の論理チャネルを備えているため、複数のレールを包括的に解析するための多様な収集ニーズに対応できます。1チャネル当たり500 Mポイントという業界最大の標準メモリを搭載しているため、信号の細部を捕捉できるサンプリング分解能を維持しながら、ミリ秒単位の電源オン/オフシーケンスを十分に捕捉できます。

リップルノイズ解析では帯域幅を狭めることで、12ビットADCサンプルを18ビットの高分解能(HD)に拡張して正確な測定を実行できます。この測定器では高い入力感度(500 μV/div)と広いオフセット範囲(±5 V)を使用できるので、ユーザーは最高の垂直感度設定で50 Vdcレール(10:1プローブ)を評価することができます。MXOアーキテクチャーは、強化されたフロントエンド性能を活用して、優れた感度(垂直軸目盛が<0.0001)を実現するサンプルベースのトリガを使用しています。

高い感度と広いオフセットを実現するMXOのフロントエンド性能
高い感度と広いオフセットを実現するMXOのフロントエンド性能
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MXOオシロスコープの利点

  • 8個のアナログチャネルと16個のデジタル論理チャネル
  • 1チャネル当たり500 Mポイントの標準メモリ
  • 12ビットADCと18ビットHDモード
  • 500 μV/divの感度と±5 Vのオフセット範囲
  • デジタルトリガの実装
パワーレール間のタイミング遅延
異なる回路部品をアクティブにする前に安定した電源を使用できるようにするためには、パワーレール間のタイミング遅延が必要です。
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電源シーケンス測定の検討事項

回路が機能するには、特定のタイミングにおける精密な電圧レベルが不可欠です。回路の基本テストとしての電源シーケンスは、複数のパワーレールをプロービングして比較するときのプロセスが面倒になる可能性があります。この場合、論理チャネルを使用できますが、電圧の詳細は制限され、しきい値に対して1または0を示すのみになります。遷移の詳細を捕捉するには、アナログチャネルの数を増やす方が適しています。

十分なレコード長は、特に数百ミリ秒または数秒にわたって観測する場合に重要です(ハイパワー回路の場合)。十分な放電時間を確保して電源シーケンスの動作状態を徹底的に評価するためには、より長いレコード長が不可欠になります。電源分配回路では、低い電圧のDCレールは高い電圧の電源から派生するため、さらに小さなレールに対するレギュレーション前に安定するための時間が必要です。

ノイズリップルのスペクトラム解析
ノイズリップルのスペクトラム解析には、ノイズ周波数成分が表示されます。
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リップルノイズ測定の検討事項

パワーインテグリティーを特定する際には、帯域幅が重要です。測定システムは常に、帯域幅が高いほど、高いノイズレベルを捕捉できます。不要なノイズや高調波をフィルターで除去しながら関連する周波数成分を捕捉するには、目的の周波数範囲を特定し、測定機器で適切な測定帯域幅とフィルタリングを選択することが重要です。電力変換回路のスイッチング周波数は通常1 MHzです。そのため、フィードバック制御ループの安定度解析には20 MHzの帯域幅で十分です。また、GHz範囲の高い帯域幅で電源リップルノイズを特性評価する傾向も高まっています。この傾向では、高速な負荷変動の解析が重視されます。R&S®RT-ZPR パワーレール・プローブは、最大4 GHzの解析帯域幅を実現しています。

リップルノイズを測定する際は、セットアップに追加ノイズが注入されないように注意が必要です。短い直接的な接続により、干渉を最小限に抑えることができます。同軸ケーブルを使用すれば、あらゆる測定でインダクタンスの低いセットアップを実現できます。

スペクトラム解析を行えば、さらに知見が加わり、電源リップルの周波数成分の特定、具体的なノイズ源の正確な特定、それらに対する効果的な対応が可能になります。MXOオシロスコープは、45,000 FFT/sの速度で更新されるパワフルなスペクトラム解析機能を備えています。高速な更新速度により、スペクトラムノイズを高速な応答で表示でき、発生頻度の低い散発的なイベントのEMI解析に対応できます。近磁界プローブと組み合わせれば、エミッション源を特定でき、必要なフィルター設計を適用して電源ノイズの問題を軽減できます。

まとめ

電源シーケンスおよびパワーレールの解析は、適切な回路動作を保証するための基本測定です。8チャネルを備えたMXO 5シリーズは、複数のレール解析に最適です。1チャネル当たり500 Mポイントの標準メモリは高いサンプリング分解能を維持し、12ビットADCは最高の精度により正確な測定を実行します。フィルタリングとボックスカーアベレージングにより、最大18ビットの精度を提供するHDモードを使用可能です。MXO 5シリーズは、500 μV/divという高い感度と±5 Vのオフセット範囲も実現しているため、パワーレール測定におけるパッシブプローブのセットアップが容易になります。チャネル入力では、選択的にフィルターを適用したり、HDモードフィルタリングを使用したりして、必要な測定帯域幅を生成することもできます。スペクトラム解析や周波数応答解析などの機能も、パワーリップルの動作を特性評価する際に便利です。

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