ケーブルインピーダンス測定

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ケーブルインピーダンス測定

著者:Paul Denisowski、プロダクトマネージメント・エンジニア

高周波の電子機器と通信には、同軸ケーブルの特性インピーダンスの測定が不可欠です。そのためには、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(VNA)とスミスチャートを使用します。

同軸ケーブルのインピーダンス

同軸ケーブルは次の3つの主要な要素で構成されています。

  • 内部導線:信号を搬送する芯線。
  • 誘電絶縁材料:内部導線の周囲にある絶縁材料のレイヤー。
  • 導電性の外側シールド:誘電体レイヤーを包む金属製シールド。信号の戻り経路として機能すると同時に、外部の電磁波障害を防ぎます。

通常、これらの部分は、さらにプラスチック製の絶縁体レイヤーで覆われています。同軸ケーブルの特性インピーダンスは、内部導線の直径と外側シールドの直径、およびこれらの間にある絶縁材料の誘電率の関数で求められます。大半の同軸ケーブルは、50または75Ωの特性インピーダンスで設計されています。一般にインピーダンスはケーブルの外装部分に印字されていますが、この情報が見つからない場合は、VNAで測定することができます。

同軸ケーブルの構造

VNAによる同軸ケーブルの特性インピーダンスの測定

VNAは、4分の1波長インピーダンス変圧器の原理を使用して同軸ケーブルの特性インピーダンスを測定できます。4分の1波長インピーダンス変圧器とは、4分の1の波長を持ち、既知のインピーダンスZLで終端する伝送ラインです。特性インピーダンスZ0は、既知の値であるZLと、VNAで測定される入力インピーダンスZinから計算できます。

同軸ケーブルの特性インピーダンス

測定プロセスは、以下の4つのステップに分けることができます。

  • VNAの校正:VNAでOSM(オープン、ショート、マッチ)校正を行います。このステップで精度は向上しますが、単にケーブルインピーダンスが50または75Ωかどうかを確認することが目的の場合、このステップは不要かもしれません。
  • ケーブルの接続:同軸ケーブルをVNAに接続し、50Ωの負荷で終端します。
  • S11測定の実行:VNAで反射(S11)測定を設定し、実行します。掃引のスタート/ストップ周波数を適切に設定する必要があります。
  • スミスチャートによる測定結果の解釈:測定結果をスミスチャートにプロットしてインピーダンスを確認します。ケーブルと負荷のインピーダンスがどちらも50Ωの場合、スミスチャートの中央に小さい円が表示されます。ケーブルと負荷のインピーダンスが異なる場合、トレースの形は円の一部か、複数の円になります。

ケーブルインピーダンス測定のプロセス

正しい掃引周波数の設定

インピーダンスを正確に測定するには、掃引周波数を正しく設定する必要があります。

  • スタート周波数は低くします。通常は100 kHz以下です。
  • ストップ周波数は、トレースが抵抗軸に1回だけ交わるような十分な高さに設定する必要があります。理想のストップ周波数(MHz単位)は、75をケーブル長の概数(メートル単位)で割って見積もることができます。この見積もりは、ケーブルの信号速度の4分の1波長に基づきます。

ケーブルは真空と比較して信号の伝搬速度が遅いため、計算されたストップ周波数では、スミスチャート上でわずかにオーバーシュートが起こる可能性があります。しかし、その場合でも許容可能な測定結果が得られます。

スミスチャートで正しい掃引周波数を検出

ケーブルインピーダンスの確認

「理想的な」トレースを取得した後、マーカーを使用して、トレースと抵抗軸の交点を見つけます。この値が入力インピーダンスZinを表します。トレースポイントが厳密に抵抗軸上にない場合でも、最も近いポイントを使用すれば、正確な測定結果が得られます。最後に、Zinの測定値と既知の負荷インピーダンスZLを使用して、ケーブルの特性インピーダンスを計算します。

まとめ

  • 大半の同軸ケーブルの公称インピーダンスは、50または75Ωです。
  • 一般にインピーダンスはケーブルの外装部分に印字されています。
  • インピーダンスは、VNAスミスチャートを使用して測定することもできます。
    • 標準の1ポートOSM校正を実行します。
    • ケーブルをVNAに接続し、50Ωの負荷で終端します。
    • 適切に設定したスタート/ストップ周波数を使用してS11測定を実行します。
    • スミスチャートを使用して測定結果を解釈します。トレースが中央付近の場合、インピーダンスは50Ωです。それ以外の場合は、トレースと抵抗軸の交点を見つけます。
    • 測定したインピーダンスZinと既知の負荷インピーダンスZLを使用して、特性インピーダンスを計算します。
  • この手法は、同軸以外のいくつかの種類のケーブルにも使用できます。

ケーブルインピーダンス測定についてご不明な点がございましたら、弊社のエキスパートがお答えします。

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