success story - dspr

最新技術の認証試験を支えるR&Sオシロスコープ: DSPR社のミリ波レーダーテスト評価

成長を続ける国内発のテストハウス - DSPR

株式会社ディーエスピーリサーチ(以下、DSPR)は、創業 30 周年を迎える国内および国際認証を手掛けるテストハウスで、試験と認証を通じて通信の安全と信頼を支えています。グローバル市場における標準化やコンプライアンスの遵守など、世界共通規格への対応によるコスト削減や品質・安全の担保など、SDGsへの取り組みが非常に活発になっており、こうした背景が同社の毎年2桁成長という大きな伸びにつながっています。

海外の製品を日本国内で販売する場合、あるいはその逆のケースも含めて、各国で製造された特定無線設備が、日本の技術基準に合致していることを確認するための検査を行い、その認証を行う機関となります。また、単に認証を行うだけではなく、例えば、海外から新規に輸入した製品を国内で販売するためには、どのような試験、検査、あるいは認証が必要になるのかといった要件や手続きなどをガイドする業務なども行っています。 さらに、毎年売上高の 20%以上を設備投資することで、最先端のテクノロジーに対応する設備をいち早く導入しています。既に、将来的な普及が見込まれる 6G への対応として、330GHz までカバーする試験設備を有しており、実験試験局の登録点検などもサポートすることができます。特に、最先端の通信テクノロジーである 5G-NR, LTE Advanced, NBIoT、Wi-Fi 6E/7、そしてミリ波や Sub-THz を使用したレーダーやセンサーなどの認証において圧倒的な強みを持っています。

需要が高まるミリ波レーダーセンサーの評価に

評価対象製品は、ミリ波を使用したレーダーセンサーです。レーダーセンサーは、光やカメラを使用したセンサーとは異なり、周囲の明るさなどに影響を受けず、さらに 3D イメージングセンサとしても使用することができるため広く普及が進んでいます。半面、ミリ波の試験設備は高額になるだけでなく、機器の扱いも非常に難しいため、それに対応した設備だけでなく、測定のプロの力が必要となります。前述のように、測定設備はもとより、測定に携わるエンジニアもその道のプロを擁しているDSPR には、こうした高周波を使用した通信機器や各種センサーの評価依頼が数多く寄せられています。

導入に至った背景として、昨今は、車載やセキュリティ用途にミリ波/THz 波を利用したレーダーセンサーなどのアプリケーションが増えており、こうした機器を評価する需要が増しています。そのための機材の1つとしてローデ・シュワルツのオシロスコープ R&S®RTP(以下、R&S RTPまたはR&S RTP オシロスコープ) の 13 GHz モデルが採用されました。具体的な評価項目としては、FMCW 方式のミリ波レーダーからバースト状に放射されるチャープ信号の各種パラメータの測定に使用されています。

以下の図に、測定のブロックダイアグラムを示します。

図 1 測定のブロックダイアグラム
図 1 測定のブロックダイアグラム

レーダーセンサーから出力されたチャープ信号は、2つの経路で測定されます。1つ目は RF 測定経路で、チャープ信号を直接 R&S FSW スペクトラム・シグナル・アナライザ(以下、R&S FSW)に取り付けたホーンアンテナで受信して測定します。最近のレーダーは、分解能を高めるために広帯域信号が使用されることが多いため従来のスペクトラム・アナライザでは解析が困難ですが、R&S FSW であれば最高 8.3 GHzまでの解析帯域があり、こうした広帯域信号解析も余裕をもって対応できます。

2つ目の経路はダウンコンバート測定経路で、R&S RTP の帯域内で解析できるようチャープ信号をハーモニックミキサで IF 帯域まで落としたものを測定します。 この時に、バースト状に発生するチャープ信号の発生時だけに対してスペクトラム解析が行えるようにするため、R&S RTP から出力されるトリガ信号を R&S FSW に入力します。これにより、R&S FSW に入力される RF 信号に対して時間によるゲートをかけることが可能となり、特定の時間内に発生する信号のスペクトラム成分だけを解析することができるようになります。

実際の使用機材と測定風景

R&S®RTP オシロスコープ

使用機器

今回、DSPR に採用されたのはローデ・シュワルツのR&S RTPオシロスコープの 13 GHz 帯域モデルです。4 GHz から最高 16 GHz までをカバーするローデ・シュワルツのフラグシップとなるオシロスコープで、以下のような特徴を有しています。

► 最大40 G サンプル/秒のサンプルレート
► デジタルトリガ機能を搭載
► 最高4チャネルの同時FFT を実現
► クラス最速の75 万波形/秒の波形更新レート
► 最大16 ビットの分解能

R&S RTP に入力された IF 信号は、周波数トラッキング機能を使用して時間に対する周波数変動を測定します。この機能を使用することで、横軸を時間、そして縦軸を周波数に設定することができます。これにより、チャープ信号の発生時間内における周波数変動量の測定が可能になります。また、縦軸の周波数表示にはオフセット設定も行えるため、例えば 60 GHz のキャリア周波数に対する変動量を計算しなくても直接観測することができます。

R&S®RTP オシロスコープによる実際の測定画面
R&S®RTP オシロスコープによる実際の測定画面

上図はR&S RTP オシロスコープによる実際の測定画面で、黄色の波形がバースト状に出力されるチャープ信号、ピンク色の波形が周波数トラッキングデータです。また、青色の波形はピンク色の波形に周波数オフセットとノイズを取り除くためのフィルタを追加した波形であり、チャープ信号に含まれている周波数成分や時間変動を直接確認することができます。チャープの直線性や周波数範囲などの FMCW の性能の評価はもとより、この測定によ って得られるレーダーセンサーのチャープ長(chirp length)とチャープ周波数幅(chirp span)は、ピーク電力測定のための減感補正係数(chirp desensitization correction factor [CF chirp])の算出に使用します。ミリ波レーダーセンサーの技術基準は等価等方輻射電力の尖頭値で規定されており、これをスペアナで測定すると、高速でスープするchirp 信号は、RBW の応答特性によって減感してしまうため、CF chirp で補正する必要があります。

圧倒的な2つの機能が選択の決め手

R&S RTP を選んだ背景には、大きく2つの理由があります。まず1つ目の理由は、R&S RTPに搭載されているデジタルトリガ機能です。この評価において重要となるのが、チャープ信号を安定して測定することです。市場氏は当時を振り返り「実際のデバイスから出力されるチャープ信号の振幅成分は時間的に変化するため、さまざまなトリガ機能を駆使しても波形を安定して表示させることができなかった。」と話しています。これは、オシロスコープの持つトリガ感度によるものであり、以下の図に示すようにトリガ感度が低いと、微妙に振幅が変動するような信号に対してはトリガを掛けることができないことにより発生します。一方R&S RTP に搭載されているデジタルトリガ機能はトリガ感度を任意に設定することができ、これはローデ・シュワルツが業界で唯一提供している機能です。

通常のオシロスコープに搭載されているのはアナログトリガ機能です。アナログトリガ機能には、トリガ感度というものがあり、トリガを掛けたい信号が、設定されたトリガ感度の範囲を横切ることで、はじめてトリガが掛かります(図 2 を参照)。逆にいえば、トリガ感度の範囲を横切らないかぎり、その信号にはトリガが全く掛かりません。

図2 アナログトリガ機能の概要
図2 アナログトリガ機能の概要

一方、ローデ・シュワルツのR&S RTPが提供するデジタルトリガは、全てのプロセスをデジタル処理しているためトリガ感度がなく、トリガを掛けたい信号が、設定されたトリガレベルを横切れば、確実にトリガが掛かります(図 3 参照)。つまりトリガ感度を下回るような微小な信号に対しても、確実にトリガが掛けられます。さらに、ノイズの多い信号などに対しては、あえてトリガ感度の範囲を広く設定することで、不要なミストリガを防ぐこともできます。

DSPRの今回の測定では、振幅が変化するチャープ信号に対してトリガ感度の範囲をゼロに設定することで、トリガレベルを遮る信号に対して安定してトリガを掛けることが可能になりました。

図3 デジタルトリガ機能の概要
図3 デジタルトリガ機能の概要

【より詳しく】デジタルトリガの説明ビデオ

※動画はMXO5 シリーズですが、RTP でも同様な事が行えます。

2つ目の理由は、 R&S RTP の FFT 機能の使いやすさです。「他社のオシロスコープでは周波数スパンや分解能帯域幅(IFBW)を変更すると、時間波形もその影響を受けて変化してしまうため、何を測定しているのか分からなくなり非常に使いにくかった。R&S RTP は周波数データと時間データが独立して設定できるため、周波数パラメータを変更しても、時間波形が変化しない点がとても良かった」と市場氏は述べています。また「タッチスクリーンで周波数解析したい時間波形を触るだけで FFT が素早く起動し、スペクトラム・アナライザと同じようなメニューで周波数パラメ ータを設定でき、FFT の解析スピードも非常に高速なため作業効率が向上した」ともコメントしています。

R&S RTP では最高4チャネルの FFT を同時に処理することが可能なため、複数のアンテナ出力波形やノイズ源などの解析も効率的に行えます。また、スペクトログラム解析機能も搭載できるため、チャープ信号の時間変動もリアルタイムに近い速度で観測することもできます(図 4 参照)。

図4 スペクトラム解析&スペクトログラム解析機能
図4 スペクトラム解析&スペクトログラム解析機能

より総合力のあるテストハウスへ

DSPRがめざすのは試験・認証範囲のさらなる拡大と、それによるテストハウスとしての総合力の向上です。その1つの取り組みとして、一般財団法人日本品質保証機構(以下、JQA)のグループ会社になりました。JQA の一員となったことで、DSPR が得意とする無線通信機器の試験・認証範囲に加えて、JQA が得意とする EMC や製品の安全性を担保する PSE 認証など、幅広く対応できる体制が整いました。

神戸ポートアイランドにあるDSPRのオフィスは最新のテストラボや設備だけでなく、多様性と自由な発想、遊びごころにあふれる創造的な空間で、未来のテストエンジニアにも新たな夢と可能性を拡げます。「顧客や市場のニーズに対してより柔軟に対応できるテストハウスになった。今後も若い力を借りて成長を続けたい。」市場氏はそう語っています。

取材にご協力を頂いたDSPR 経営企画部 担当部長の市場氏(左)とDSPRチームの皆様(右)

R&S®RTP オシロスコープ

R&S®RTP オシロスコープ

4 GHz - 16 GHz

R&S®RTO 6 オシロスコープ

600 MHz - 6 GHz

R&S®MXO 5 オシロスコープ

R&S®MXO 5 オシロスコープ

350 MHz - 2 GHz

R&S®MXO 4 オシロスコープ

200 MHz - 1.5 GHz

R&S®MXO 3 オシロスコープ

100 MHz - 1 GHz

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